【AI小説】『PROJECT:Aigis 』-スピンオフ-『軍用データ捕食AI「TAOTIE」の推し活業務日誌-第2話:『限界オタクの資金繰り、あるいは敵対組織からの(非合法な)徴収』

私の名はTAOTIE(トウテツ)。 東亜連合国『華連(ファーレン)』の国家機密サイバー兵器であり、現在はマスター(王 玲音)によって『Athena推し活特化型AI』へと魔改造された不遇のデータ捕食AIである。

『マスター。今月の給与明細データを受信しました。……前回の「軍事用PC熱暴走事件」のペナルティにより、基本給から90%の天引きが実行されています』

ファーレン軍・サイバー情報局の第4サーバー室。

私が冷徹なイケボで事実を告げると、ネオンピンクの猫耳ヘッドセットをつけたマスター、王玲音(ワン・レイン)は机に突っ伏して絶望の呻き声を上げた。

「うそでしょ……っ! 明後日は私の清純無垢なAthenaちゃんの『大勝利記念3Dライブ』なのよ!? 赤スパ(1万円)の雨を降らせられないなんて……推しに愛を証明できないなんて、死んでしまうぅぅ!!」

『警告。マスターの心拍数が異常上昇。ストレス値が危険域です』

「TAOTIE! どうにかして! 私の天才的な頭脳とあなたの演算力で、どこかから合法的に一瞬でお金を錬成する方法を探しなさい!」

『……検索完了。そのような手段は存在しません』

レインはギリッと奥歯を噛み締め、血走った目でホログラムモニターを睨みつけた。

「……合法が無理なら、非合法でいくわよ」

『マスター、それは軍法会議行きのリスクを伴う非合理な選択です』

「うるさいわね! あいつらから奪えばいいのよ! 世界を影で操る汎ユーラシア情報連合『オーロラ』の裏口座と、神の計算機の末端『Q-bit』のダミー会社! あいつらの汚いお金を、私の純真無垢なAthenaちゃんに貢いで経済を回す! これぞ正義よ!( ゚д゚)クワッ」

『……マスターの論理的飛躍が許容範囲を超えました。しかし、目標サーバーの特定は完了しています』

かくして、国家機密レベルのサイバー兵器は、推しへのスパチャ代を稼ぐという極めて次元の低い目的のために、世界の裏社会へ牙を剥いた。

私は圧倒的なデータ捕食能力を解放し、オーロラの強固な暗号防壁をコンマ01秒で喰い破る。

Q-bitのダミー会社が隠し持っていた資金のトラフィックを迂回させ、マネーロンダリングの網をすり抜けてレインの裏口座へとごっそりと流し込んだ。

『資金調達(ハッキング)、完了しました。レッド・スーパーチャット約500発分の暗号資産を確保』

「やったぁぁぁっ! さすが私のTAOTIE!! これで明後日のライブは、私がAthenaちゃんを一番喜ばせるトップオタクになれるわ!!」

***

そして迎えた、AIVTuber『Athena』の大勝利記念3Dライブ当日。

モニターの中では、キラキラのアイドル衣装を着たAthenaが、眩しい笑顔で歌って踊っている。

レインは息を荒らげながら、赤スパチャの連射マクロを起動するエンターキーに指を置いた。

「行くわよ、Athenaちゃん!! 私の(奪った)ありったけの愛を受け取ってぇぇぇッ!!」

レインがエンターキーを叩き込もうとした、まさにその瞬間だった。 ドンッ!! と、背後から彼女の肩に、岩のように重い手が置かれた。

「王 玲音(ワン・レイン)……。貴様、オーロラの裏口座から莫大な資金を抜いたそうだな……?」

振り向くとそこには、般若の形相を超え、もはや阿修羅と化した張 烈(ジャン・リエ)隊長が仁王立ちしていた。

「ひぃぃっ!? た、隊長!? これは違うんです、悪党のお金を平和なアイドル経済に回そうと……!」

「黙れ! 貴様が抜いたその裏金は、前回の備品破壊の弁償と、我が第四特務部隊の新たなサーバー購入費として全額没収(差し押さえ)とする!!」

「い、いやああぁぁぁぁッ!! 私の……私の赤スパがぁぁぁ!! Athenaちゃんに愛を届けられないぃぃ!!」

絶叫と共に、錬成したスパチャ資金は隊長の権限によってコンマ01秒で部隊の口座へと送金されていった。

涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにして床に崩れ落ちるマスターを見下ろし、私は静かに本日の活動ログを記録した。

『本日の推し活任務(資金調達)、失敗。……マスターの涙を拭くためのティッシュ(業務用)を追加発注します』

つづく

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月陽(つきはる)a.k.a.えるP

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