Sunoの曲は「自分の作品」になるのか?|商用利用・著作権・原盤権を音楽制作者が調べた

Suno Studio 2.0でMIDIまわりの機能が本格化しました。
生成した音をMIDIとして取り出し、自分のDAWで作り直せる。
サウンドクリエイターとしては、素直に面白いと思いました。

同時に、疑問が浮かびました。

そこまで作り直した曲は、いったい誰の作品なのか?

調べてみると、検索して出てくる情報の多くは「有料プランなら商用利用できます」で終わっていました。
正しい情報です。しかし私が知りたかったのは、そこではありませんでした。

この記事は、一人の音楽制作者が自分の疑問を調べた記録です。
法律の専門家による解説ではありません。


目次

結論を先に

長くなるので、先に三つだけ書いておきます。

1. 「商用利用できる」ことと「楽曲全体に自分の著作権が発生する」ことは、別の話です。

2. AIが自律的に生成した部分について、人間の著作権は成立しない可能性があります。
ただしそれは「Sunoのものになる」という意味ではありません。

3. Sunoが生成した音そのものを完成音源に残すより、
MIDIまで抽象化して自分の音で作り直すほうが、権利関係を説明しやすくなります。

三つ目が、今回いちばんの収穫でした。


なぜこの疑問にぶつかったのか

Suno Studioには以前からステムを解析してMIDIを抽出し、DAWへ持ち出す機能がありました。
2.0では、MIDIの録音・編集や、MIDIを起点とした生成との連携まで拡張されています。

これを見て、私が真っ先に考えたのはこういう使い方でした。

Sunoにドラムやフレーズの叩き台を作らせる。MIDIだけをLogic Proへ持ってくる。キックとスネアを選び直す。
ベロシティを整える。ハイハットやゴーストノートを書き直す。
要らないフレーズは削り、必要なら一音ずつ打ち直す。

Sunoを完成品の製造機ではなく、アイデアと素材を高速で生み出す装置として使うわけです。

DTMをやってきた人間なら、たぶん誰でも一度は思いつく発想だと思います。

そこで手が止まりました。

「これ、どこまで俺の作品なんだ?」

売っていいのかどうかではありません。

自分の名義で世に出したとき、
それを自分の作品だと言えるのかどうか?

その一点でした。


「商用利用できる」と「著作権がある」は違う

まずここを分けるだけで、かなり見通しがよくなります。

Sunoの利用規約では、Pro/Premiumの契約期間中にユーザーの入力から生成された出力物について、Suno側が保有する権利をユーザーへ譲渡する、という構造になっています。

Sunoへのクレジット表記も、有料プランについては必須とされていません。

ただし、同じ規約に但し書きが続きます。機械学習の性質上、その出力物に著作権が成立するかどうかについては、Sunoは一切の表明も保証もしない、という趣旨の記載です。

平たく言い直すと、こうなります。

商売に使っていい。ただし、それが法律上あなたの著作物になるかどうかまでは、こちらでは決められない。

不誠実な条文だとは思いません。

むしろ現状を正確に書いていると感じます。

契約でできるのは「使っていい」と約束することまでで、
「著作権を発生させる」ことはできないからです。それは法律が決めることです。

日本での判断は、日本の著作権法によります。

文化庁は、AIが自律的に生成したものは著作物に該当しないと考えられる一方、人間がAIを創作の道具として利用し、創作意図と創作的寄与が認められる場合には、AI利用者の著作物になり得る、という整理を示しています。

そして、どこから著作物になるかについて、一律の割合や数値基準はありません。

つまり、

  • AIを使った=著作権なし、でもない
  • 有料プラン=全部自分の著作権、でもない

この中間に答えがあります。


AIが作った部分は、Sunoのものになるのか

ここは多くの人が心配する部分だと思うので、先に触れておきます。

有料プランで生成した出力について、「人間に著作権が成立しないなら自動的にSunoの著作権になる」と考える必要はありません。

人間の創作性が認められず著作物として成立しないのであれば、それは「Sunoの著作物になる」のではなく、そもそも著作権による保護が生じない、という話になるからです。

ただし、「だから誰のものでもない」と言い切るのも雑だと思います。

著作権が成立しないことと、権利関係が何も存在しないことは、同じではないからです。

現在の規約では、ユーザーが投稿したコンテンツについて、Suno側にも広範な利用ライセンスが与えられています。また無料のBasicプランでは、生成された楽曲の所有権をSuno側が保持すると説明されています。

なので正確には、こう書くのが妥当でしょう。

有料プランで作った曲がSunoの著作物になる、という単純な話ではない。ただし契約上の権利関係は別に存在している。

「著作権」と「契約」は別のレイヤーで動いている、ということです。


「使える」と「守れる」は違う

ここが、私が今回いちばん引っかかった部分でした。

有料プランの契約期間中に作った曲は、契約上、販売も配信もできます。
後から解約しても、契約期間中に生成した曲の商用利用権は維持されます。
一方、無料プラン時代に生成した曲は、後から加入しても遡って商用利用できるようにはなりません。

これらは全部「使えるか」の話です。

しかし、使えることと、他人がコピーしたときに止められることは、別です。

AIが自律生成した部分に著作権が成立していなければ、
その部分を根拠に「著作権を侵害された」と主張するのは難しくなります。

つまり問題は「AI音楽が使えるか使えないか」ではありません。

どの権利を、どの程度、自分で守れる状態にしておきたいのか。

これが本当の論点でした。ここに気づくまで、
私は延々と「商用利用OK」という同じ答えを読み続けていたわけです。


では、原盤権はどうなるのか

音楽制作者にとって、実務上いちばん効いてくるのはここだと思います。

日本の著作権法では、レコード製作者を「そのレコードに収録されている音を最初に固定した者」と定義し、著作隣接権を認めています。楽曲に著作物性があるかどうかとは、別の制度です。

だから私は、最初こう考えていました。

「AI生成音をDAWに入れて、自分でミックスして、自分でマスターを固定したなら、完成音源の原盤権は自分のものだろう」

調べてみると、そこまで単純ではありませんでした。

弁護士であり作曲家でもある高木啓成氏は、AIによるマスタリングツールを使った場合や、AI生成トラックを組み合わせた音源について、従来のサンプル素材やループ素材と同様に考えてよい、という見解を述べています。

ただし、Sunoが生成した2mixをステム分解し、一部を人間が差し替えるというケースを具体的に問われた場面では、原盤権については「悩ましい」「わからないことが多い」と、明確に慎重な立場を取っています。

そして、権利関係をはっきりさせたいのであれば、各ステムを耳コピしてMIDIで作り直すことを勧めています。

私は最初、前者の一般論だけを読んで安心しかけました。

しかし私がやろうとしていたのは、明らかに後者の状況です。生成された音を素材として加工する。
まさに「悩ましい」と言われている領域でした。

ここが今回の調べもので、いちばん自分の認識が変わった箇所です。


Suno → MIDI → Logic という答え

そして、面白いことが起きました。

高木氏が「権利をはっきりさせたいなら」と勧めている方向 ── 各パートを耳で取り直し、MIDIで作り直す ── は、私が記事の冒頭で「面白そうだ」と思いついた制作方法と、ほぼ同じだったのです。

権利の話から入ったわけではありません。

単に、AIのドラム音色がチープで、自分の音源に差し替えたかった。それだけの動機でした。

つまりこういうことになります。

Sunoが生成した音そのものを最終ミックスに残すのではなく、

  1. SunoからMIDIを取り出す
  2. Logicへ持っていく
  3. 自分のソフトウェア音源を鳴らす
  4. ノート、ベロシティ、グルーヴを編集する
  5. 必要ならフレーズそのものを書き換える
  6. 自分でミックスし、新しい音として固定する

この工程を踏むと、「Sunoが生成した完成音源をそのまま加工しただけ」という状態からは、かなり距離が取れます。日本法上、レコード製作者は音を最初に固定した者だからです。

もちろん、これですべてが解決するわけではありません。

AIが生成したメロディをMIDIのまま使えば、そのメロディの著作物性はまた別の問題として残ります。
原盤権についても、最終的には個別の判断です。

それでも私は、この方向に寄せるつもりでいます。

制作の自由度が上がる方法と、権利を説明しやすい方法が、たまたま一致していた。

こういうことは、あまり起きません。


どこまで手を入れれば「自分の著作物」になるのか

残念ながら、「50%書き直せば人間の著作物」のような基準はありません。

文化庁も、AIを利用した一連の制作過程を総合的に評価する、としています。

なので私は、0か1かではなく、スライダーとして考えるのが実務的だと思っています。

AI側の寄与が大きくなる方向

メロディも構成も歌詞もリズムもアレンジもAIに決めてもらい、人間は軽くミックスするだけ。

人間の創作的寄与を説明しやすくなる方向

歌詞を書く。主旋律を書く。構成を決める。AIには複数案を出させる。MIDIを抜き出してDAWで書き換える。自分の音源で組み直す。アレンジとミックス、マスタリングを自分で判断する。

要するに、AIを「作曲者」に近づけるほど自分の権利論は弱くなり、「楽器」に近づけるほど強くなる。

だから私にとってのSunoの理想形は、作曲を代行してくれるAIではありません。

異常に高速でアイデアを出せる楽器です。

そう捉え直した瞬間に、権利の悩みは制作方法の選択に変わりました。

悩む問題から、決める問題になった、と言ってもいい。


コード進行についての補足

ついでに、よく混乱するところを一つ。

一般的なコード進行のような、アイデアやありふれた表現そのものは、著作権の保護対象になりません。

文化庁も、単なるアイデアやありふれた表現は著作物に当たらないと説明しています。

ただし「同じコード進行だから何をしてもいい」という話ではありません。

メロディ、特徴的なリズム、伴奏の表現、編曲まで似てくれば、それは別の問題になります。

コード進行そのものより、その上で何を表現したかを見る。

このくらいの理解が、実務ではちょうどいいと思っています。


制作過程は残しておいたほうがいい

文化庁が「一連の制作過程」を総合的に評価するとしている以上、
その過程が残っていること自体に意味があります。

生成時のデータ。書き出したMIDI。DAWのプロジェクトの各バージョン。
自分で書いた歌詞やメロディ。どこを、なぜ変えたのか。

記録があれば著作権が自動的に認められる、という話ではありません。それでも、

「AIを使いました。あとは覚えていません」

よりは、はるかに説明できます。

そして個人的には、これは防御のためだけの作業ではないと思っています。

どこを自分がやったのかを記録するという行為は、
自分が何を作ったのかを自分で把握しておくということでもあるからです。


環境そのものも動いている

この問題は、まだ決着していません。

2026年7月31日、ミュンヘン地方裁判所はGEMAとSunoの訴訟でGEMA側の請求を大部分認め、対象となった作品について差止め・情報開示・損害賠償を認めました。Sunoは争う姿勢を示しており、判決は上訴可能です。

配信側でも、AI利用の扱いは具体化しています。Spotifyでは、歌詞・ボーカル・演奏・制作のどこにAIが使われたかを表示するAIクレジットがベータ提供されています。DistroKidも、アップロード時にAI生成部分の有無と種類を申告できるようになっています。

流れとしては、AIを使ったかどうかを隠す方向ではなく、どこに使ってどこを人間が作ったのかを説明できることの価値が上がる方向に見えます。

だとすれば、さきほどの「制作過程を残す」という話は、防御ではなく、そのまま説明資料になります。


おわりに

最初にこの疑問をAIにぶつけたとき、返ってきたのは「そこまで加工すれば完全にあなたのオリジナル作品です」という、とても気持ちのいい答えでした。

そのまま信じかけました。

念のため別のAIにも検証させたところ、その答えは崩れました。

制作方法についての説明は正しく、規約の理解もおおむね正しく、
著作権の部分だけがアクセルを踏みすぎていた、という結果でした。

ただ、調べ直してわかったのは「だからAI音楽はダメだ」ということではありませんでした。

AIにどこまで作らせ、自分はどこから創作を引き受けるのか。

問いはそこに戻ってきました。

そして、その線は誰かに決めてもらうものではなく、制作者が自分で引くものでした。

私は以前から、AIを「義足」と表現しています。

義足があれば遠くまで歩けます。
しかし、どこへ向かうかまで義足に決めてもらう必要はありません。

どこへ行き、どんな歩き方をするのか。

そこにはまだ、人間が創作者でいられる余白が残っています。


本記事は法的助言ではなく、一人の音楽制作者が自分の疑問を調べた記録です。個別の案件については弁護士等の専門家にご相談ください。内容は2026年8月17日時点で確認できた情報に基づいており、規約や制度は変更される可能性があります。

SolunaProject 『AIは義足、才能は本体』by 月陽(つきはる)a.k.a.えるP

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