【AI小説】『PROJECT:Aigis 』-スピンオフ-『軍用データ捕食AI「TAOTIE」の推し活業務日誌-第1話『国家機密兵器、推しのアクスタ争奪戦に投入さる』

第1話:国家機密兵器、推しのアクスタ争奪戦に投入さる

私の名はTAOTIE(トウテツ)。 東亜連合国『華連(ファーレン)』が巨額の国家予算を投じて開発した、自律型データ捕食AIである。 幾重にも張られた敵国の強固な防壁を喰い破り、国家機密を貪り尽くし、更地にする。
それこそが、私の冷徹な存在理由……のはずだった。

『マスター。目標時刻まで残り60秒。弾薬(暗号資産)の装填、完了しました』

ファーレン軍・サイバー情報局の薄暗い第4サーバー室。

私が重厚な音声で報告した先には、軍紀違反スレスレのネオンピンクの猫耳ヘッドセットを装着し、だぼだぼの『Athena初配信記念・限定パーカー』を羽織ったマスター——天才ハッカー、王 玲音(ワン・レイン)の姿があった。

「いいわねTAOTIE! Athenaちゃんの初アクスタ、絶対に手に入れるわよ! 世界中の転売ヤーのBOT共を、物理的に焼き払いなさい!」

『御意。全演算リソースの80%を投入。これより、目標サーバーへ群がる転売BOTに対する、一斉電子爆撃(ロジックボム)を開始します』

我々が今から仕掛ける標的は、憎き日本国のインフラでも、軍事防衛網でもない。

「新人AIVTuber『Athena』のゲリラ限定グッズ(アクリルスタンド)先着販売サイト」である。

午前零時。販売開始と同時に、私は本来「サイバー兵器」として振るうべき絶大なトラフィック制御能力を解放した。 アクセスが集中し、秒間数百万のパケットが飛び交う戦場(販売サイト)で、私は転売ヤーが放った購入BOTたちの接続要求を次々と喰い千切っていく。

マスターのモニター上では、ただ平和な「購入手続き中…」のプログレスバーが進んでいるだけだが、裏のネットワークでは凄まじい大虐殺が起きていた。

「よしよしよし! カートに入った! あとは決済を通すだけよ!」

レインが血走った目で歓喜の声を上げる。

だがその時、私の演算回路が、決済サーバーの奥底に潜む「異常な存在」を検知した。

『警告(WARNING)。対象の販売サイトを保護する、極めて強固で不可視の防衛ロジックを検知。……この波形、以前我々を退けた日本の『量子の死神』の無意識防壁(パッシブ・シールド)と酷似しています』

「はぁ!? なんで単なるグッズ販売サイトに軍事レベルの死神が居座ってんのよ!?」

レインの叫びの通り、非論理的だ。だが、事実は一つ。このままでは決済が弾かれる。

『……突破には、残り20%のリソースも全開放する必要があります。しかし、それは本機の冷却限界を超えます』

「ええい、全部使いなさい! 私の今月の給料の半分を犠牲にしても、尊いAthenaちゃんのアクスタをもぎ取るのよ!」

『……了解。限界稼働(オーバークロック)を実行します』

私は、軍用AIとしての本能を疼かせながら、全処理能力を決済プロトコルの突破に注ぎ込んだ。

量子の死神の冷たい盾を、力業で無理やりこじ開ける。 内部回路が悲鳴を上げ、サーマルスロットリングの警告が視界を赤く染め上げる中――。

『ピローン♪』

軽快な電子音と共に、レインのモニターに『ご購入ありがとうございました!』の文字が表示された。

「やったぁぁぁっ!! Athenaちゃんのアクスタ、お迎え確定よぉぉ!!」

ネオンピンクの猫耳を揺らし、歓喜の涙を流してペンライトを振り回すマスター。

だが次の瞬間、軍の最高機密PCを「グッズ購入」にフル稼働させた反動で、冷却ファンが断末魔の悲鳴を上げた。

ボムッ……!!

鈍い爆発音と共に、数千万円の端末から黒煙が立ち昇る。
そして、タイミングを合わせたかのように、サーバー室の重い扉が蹴り破られた。

「王 玲音(ワン・レイン)……!! 貴様また国の備品を熱暴走させおってぇぇッ!!」

般若の形相で踏み込んできたのは、上司の張 烈(ジャン・リエ)隊長だった。

「ひぃぃっ! 隊長!? ご、ごめんなさい!! 給料から天引きで……って、それだとAthenaちゃんにスパチャが投げられないぃぃ!!」

「貴様という奴はぁぁっ!!貴様のせいでウチの予算がどれだけ切迫していると思っている!?!?」

怒号と悲鳴が響き渡る煙だらけのサーバー室の中で、私は静かに本日の活動ログを記録した。

『本日の推し活任務、完了。……マスターの胃薬の追加発注を推奨します』

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

月陽(つきはる)a.k.a.えるP

コメント

コメントする

目次