― 衝動だけが、AIを武器にする ―第3章「AIは賢くなった。でも、あなたの代わりには考えられない」

この話は、AIに自分の哲学を移植しようとしている人間が書くには…
少し不都合な話だ。

でも、正直に書く。

AIは賢くなった。

文章を書ける。企画を出せる。要約もできる。壁打ちもできる。
それっぽい答えなら、いくらでも返してくれる。

だから多くの人は思う。

「これを使いこなせれば、自分も変われるかもしれない」

僕も、そう思った一人だ。

でも、ここに落とし穴がある。

AIは、あなたが何に傷ついてきたのかを知らない。
何に救われたのかも知らない。

何を許せなくて、
何を美しいと思い、
何をどうしても手放せないのかも知らない。

あなたが人生のどこで立ち止まり、
どこで壊れ、それでもどこで前に進もうとしたのか。

それを、AIは最初から持っていない。

だから、何も渡さないままAIを使うとこうなる。

便利にはなる。速くはなる。作業量は増える。

でも、その人らしくならない。

これがAIに書かせた文章が、
“いかにもAI臭い文章になる”正体だ。

AIはあなたの衝動ではなく、
世間の正解を増幅してしまう。

あなたの哲学ではなく、それっぽい一般論を返してしまう。

あなたの傷から生まれた問いではなく、
どこかで見たような答えを整えてしまう。

AIは賢い。

でも、あなたの人生を生きてはいない。

AIは文章を書ける。

でも、あなたが何に泣いたのかは知らない。

AIは問い返せる。

でも、あなたが本当はどんな問いに人生を動かされてきたのかは、
最初からは知らない。

ここで少し、僕自身の話をしたい。

10代の僕は、学校に行けなくなった。

「行けなかった」というより、
「行き方がわからなくなった」という感覚に近い。

世界との接続の仕方が、うまく掴めなかった。

朝になって、制服を着る。玄関まで行く。

でも、そこで足が止まる。
ドアの向こうにある世界に、どうやって入ればいいのかわからない。

みんなが普通にできることが、自分にはできない。
普通に学校へ行く。普通に人と話す。普通に将来を考える。
その”普通”が遠かった。

それから二十数年後、双極性障害の診断を受けて、
あの頃の苦しさに名前がついた。

でも当時の僕には、そんな言葉はなかった。
ただ、自分がおかしいのだと思っていた。

そういう時期に、音楽だけは触れることができた。

ゲームの中に流れるBGMが、
なぜか自分の代わりに何かを語っているように聞こえた。

戦闘の前に心を震わせる旋律。
誰もいない夜の街で流れる少し寂しいBGM。
エンディングで、すべてが終わったあとに残る音。

それらは、僕の感情を先に知っていた。

悲しいのか。悔しいのか。寂しいのか。

それとも、ただ綺麗だと思っているのか。

自分でも名前をつけられない感情を、
音楽だけが教えてくれた。

「お前は、こう感じているんだろう」

そう言われているような気がした。

それが始まりだった。

転機は、一人の先生との出会いだった。

縁があって、芸大の作曲の先生に師事することになった。
計画的に動いたわけじゃない。たまたま出会っただけだ。

そして先生に、こう言われた。

「お前には耳と感性、そして才能がある」

その一言だった。

大げさに聞こえるかもしれない。
でも、僕にとってはそれが全てだった。

自分が聞いているものは、
他の人にも同じように聞こえているわけではないのかもしれない。
自分が感じているものは、形にできるのかもしれない。

そのとき初めて、自分の内側にあるものを、
外側から確認してもらえた気がした。

そして僕は決めた。

「俺は作曲家になる。一人でいいから、誰かの心に残る曲を作って、世に放つ」

それはコーチングではなかった。

自己分析でもなかった。

強み診断でもなかった。

先生が僕の才能を綺麗に整理してくれたわけでもない。

ただ、僕の中にすでにあったものに、
少しだけ光を当ててくれた。

それだけで、僕は動き出せた。

ここで大事なのは、順番だ。

衝動は、整理される前に存在している。

「なぜか気になる」
「どうしても忘れられない」
「うまく言えないけど、これだけは手放したくない」

そういう感覚は、誰かに名前をつけてもらう前から、もうそこにある。

では、AIはその衝動を勝手に見つけてくれるのか。

答えは、違う。

AIは、あなたが渡したものをもとに返してくる。

表面的な指示だけを渡せば、表面的な答えが返ってくる。
世間でよく見る言葉だけを渡せば、世間でよく見る文章が返ってくる。
借り物の成功法則を渡せば、それをさらに綺麗な文章にして返してくる。

それは便利だ。
でも、危うい。

自分の言葉を持たないままAIを使うと、
AIはあなたを強くするのではなく、あなたを平均化してしまう。

あなたの衝動ではなく、世間の正解を増幅する。

あなたの哲学ではなく、それっぽい一般論を返す。

あなたの傷から生まれた問いではなく、
どこかで見たような答えを整えてしまう。

これが、僕がAIに感じている怖さだ。

AIは、人間より多くの情報を持っている。

でも、あなたの人生の重さは持っていない。

AIは、多くの言葉を知っている。

でも、あなたがその言葉に辿り着くまでに何を失ったのかは知らない。

AIは、答えを整えることができる。

でも、あなたが本当はどんな問いに動かされてきたのかは、
最初からは知らない。

だから、AIに必要なのはプロンプトだけではない。

あなたの哲学だ。
原体験だ。
判断軸だ。

怒り、救い、違和感、執着、祈り。

そういうものを渡して初めて、AIはただの効率化ツールではなくなる。
あなたの衝動を、外の世界が読める形へ変える翻訳機になる。

僕がAIに惹かれたのは、そこだった。

AIは、僕の中にある制御できない衝動を、
形にするための翻訳機になるかもしれない。

自分でもうまく説明できない感覚を、言葉にする。

言葉になったものを、構造にする。
構造になったものを、誰かに届く形にする。

それができるなら、AIはただの効率化ツールではない。
衝動を現実に接続するための、武器になる。

でも、そのためにはまず、AIに読み込ませるものが必要だ。

僕がAIにそれをやってみた日のことを、次の章で話す。

一つだけ、問いを置いて終わる。

あなたの中にある「制御できない何か」は、何ですか。

それを弱点だと思って封印してきたなら、
もう少しだけ、そこを見てみてほしい。

衝動の種は、たいてい、一番触れたくない場所に埋まっている。

そして、それをAIに渡せる言葉にできたとき、
AIは初めて、あなたの武器になる。

SolunaProject 月陽

→ 第4章「衝動をAIに読み込ませた日」へ続く

#AI活用 #自己成長 #コーチング #7つの習慣 #才能開発

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