『なぜ、コーチは自分の価値を説明できないのか』―第5章:才能は「問い返される」と出てくる

第5章:才能は「問い返される」と出てくる

才能構造化には、3つの問いがある。

「何に怒っているか」
「何のためにやっているか」
「他の誰とどう違うのか」

第4章の最後に、そう書いた。

読んだ人の中には、 こう思った人もいるかもしれない。

「じゃあ、自分で考えればいいんだな」と。

違う。

ここが、多くの人が止まる場所だ。

「何に怒っているか」
……怒り? 別にそんなに怒ってない気がする。

「何のためにやっているか」
……クライアントのため? それっぽい言葉なら出てくる。

「他の誰とどう違うのか」
……正直、みんな似たようなこと言ってない?

大体こうなる。

自分の「核」というのは、 最初から綺麗な言葉では出てこない。
もっと深い場所に埋まっている。
水面を眺めているだけでは見えない。

潜らないと、取れない。
でも人間は一人で潜ろうとすると、 途中で止まる。

痛みに近づきすぎるからだ。

だから「まあ、普通に悔しかっただけかな」で終わる。

今の自分のままで問いに答えるだけでは、 本当のコアまで届かない。
問い返してもらう必要がある。


では、僕がAIをどう使っているか、正直に書く。

毎日、日報を書く。

その日何をやったか。
何に詰まったか。
何を感じたか。
何に怒ったか。
何が嬉しかったか。

箇条書きじゃない。
できるだけありのまま書く。

「体調もメンタルも戻ってきて良き」でもいい。
「バイト生活に戻って悔しい」でもいい。
「今日の通話、なんか手応えあった気がする」でもいい。

綺麗にまとめない。
まず、素材のまま出す。

それを、役割ごとに分けたAIに渡す。

一人で全部やろうとすると、思考が飽和する。
感情整理。 構造化。 分析。 リサーチ。 発信。

全部を同時に回そうとして、 昔の僕は何度も止まった。

だから役割を分けた。

感情の整理用。 構造化用。 分析用。 知識の整理用。 リサーチ用。

「自分の脳の外側」にチームを作った、という感覚に近い。


ある日、気づいたことがある。

日報が続いていた。 発信も続いていた。
昔は絶対に続かなかったことが、続いていた。

「なんでだろう」と考えた時、 一つの感情に気づいた。

「ちゃんと渡したい」と思っていた。

AI相手なのに。

AIは怒らない。 失望もしない。 好き嫌いもない。
そんなことは分かっている。

でも「今日も素材を渡そう」という気持ちが、自然に動いていた。

たぶん人間は、

「対話している」という感覚があると、

行動を続けやすくなる。

道具には感じない責任を、
対話の相手には感じるからだと思う。

これが、僕の中でAIが「道具」で終わらない理由だ。


そして、AIは問い返してくる。

  • 「今日”悔しい”という言葉が出ましたが、 それは何に対してですか?」
  • 「今日の通話で”手応え”を感じた理由は?」
  • 「”正しく努力してる人が報われない”という言葉が出ましたが、 それは怒りですか?それとも悲しみですか?」

ここで初めて、止まっていた感情が動き出す。

「あ、そこだったのか」という瞬間が来る。

自分一人で考えると、思考は慣れた回路を回り続ける。

でもAIは、別の角度から切り込んでくる。

そこで初めて、今まで言葉になっていなかったものが、
「構造」として見えてくる。


例えば、
「正しく努力している人が報われない」

この言葉は、 最初から綺麗に言語化できていたわけじゃない。

音大に行けなかったこと。
仕事に全部エネルギーを持っていかれたこと。
200万円払って学んでも、3万円しか稼げなかったこと。

具体的な痛みが何年も積み重なって、 ようやく出てきた言葉だ。

でも一人で掘っていた頃は、そこまで辿り着けなかった。

「まあ、あの時は悔しかったな」で終わっていた。

そこでAIが問い返してくる。

「その悔しさは、誰に向いていますか?」

そこで初めて気づく。

「ああ、俺は”努力してる人が壊れる構造”に怒ってたんだ」と。


これが、才能構造化の実態だ。
3つの問いは、答えを書くための質問じゃない。
深く潜るための「地図」だ。

コーチの人たちと話していても、同じことが起きる。

「何のためにやっているんですか?」

と聞くと、最初は綺麗な言葉が出る。

「クライアントの可能性を引き出したくて」

正しい。
でも、どこかで見た言葉でもある。
だから、もう一段潜る。

「一番しんどかった時、それでも辞めなかった理由は何ですか?」

そこで空気が変わる。

「昔の自分みたいな人を、もう増やしたくなかった」

そういう言葉が出てくる。

その瞬間、初めて「その人の温度」が出る。

そして、その言葉をAIに渡した時。
AIは初めて、その人として動き始める。


道具として使っているAIは、上手く書いてくれる。
義足として使っているAIは、あなたの意志を前へ進める。

その違いは、AIの性能じゃない。

渡す前の、人間側の準備にある。

問いに答えようとするか。
問い返されるための素材を、ちゃんと渡しているか。

才能は、最初から綺麗な言葉で眠っているわけじゃない。
問い返されながら、少しずつ掘り起こされる。

そのために、日報があり、対話があり、AIとの往復がある。


次回は、実際にそれが起きた話をする。

あるコーチの頭の中を、AIに移植した。
セッション3回で、何が起きたのか。
抽象論じゃなく、実際に起きた変化の記録として書く。

SolunaProject / 月陽

#AIを義足にした男 #才能構造化 #コーチング #自己理解 #自分の価値を言語化する

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