原液の掘り方|AIに渡す前に、自分を掘る3つの問い
この記事の結論
AIに書かせると自分の言葉が薄くなるなら、
必要なのは新しいプロンプト集ではありません。
先にやるべきことは、AIに渡す前の「原液」を言語化することです。
原液とは、あなたの経験・判断軸・思想・衝動のこと。
才能のある一部の人だけが持っているものではなく、誰の中にもあります。
ただ、多くの場合、それがまだ言葉になっていません。
この記事では、その原液を掘り出すために、
AIを「書かせる道具」ではなく「壁打ち相手」として使う方法を紹介します。
使う問いは3つだけです。
- 私はこれまで何をしてきたか
- なぜ私はそう選んだのか
- 私は何に納得できず、その理不尽をどう変えたいのか
この3つを順番に掘ることで、AIに渡せるあなた自身の素材が見えてきます。
原液とは何だったか
このシリーズでは、「AIに書かせるほど発信が薄くなる」という逆説を追ってきました。
原因は、AIの性能不足ではありません。
AIに渡す前の「原液」が言語化されていないことです。
原液とは、次の4つです。
- 経験
- 判断軸
- 思想
- 衝動
前章「AIは義足、才能は本体」では、この原液こそが本体であり、
AIはそれを増幅する義足にすぎない、という話をしました。
AIはゼロを増幅できません。
原液がない状態でAIに書かせると、返ってくるのは平均的で、誰にでも書ける文章です。
逆に、原液が言語化されていれば、AIはそれをもとに、
あなたの経験や判断軸を反映した文章を返しやすくなります。
では、次の問いが残ります。
原液が大事なのは分かった。では、その原液をどうやって掘ればいいのか。
今回は、その具体的な手順に入ります。
なぜ「自分を掘る」のは、一人だと難しいのか
原液の言語化が難しいのは、才能の問題ではありません。
構造の問題です。
自分の経験や判断は、自分にとって当たり前になりすぎています。
たとえば、何年も続けてきたこと。
失敗して学んだこと。
なぜか許せないこと。
人から見れば強みなのに、自分では「普通」だと思っていること。
こういうものほど、自分では価値に気づきにくい。
だから、一人でノートに向かって「私の強みは何だろう」と考えても、
出てくるのは一般的な言葉になりがちです。
「丁寧に仕事をする」「相手に寄り添う」「発信を頑張りたい」「自分らしく生きたい」
もちろん、それ自体が悪いわけではありません。
でも、そのままだとまだ薄い。
AIに渡しても、平均的な文章に戻されやすい。
ここで効くのが、AIを壁打ち相手にする方法です。
AIに書かせるのではありません。
AIに問い返させるのです。
AIを壁打ち相手にする3つの問い
ここからは、実際に使える形で紹介します。
ChatGPTでもClaudeでもGeminiでも構いません。
大事なのは、AIにいきなり答えを出させないことです。
順番は、事実 → 判断 → 衝動。
表面から深い層へ、一段ずつ掘っていきます。
問い1:事実を出す ── 私はこれまで何をしてきたか
最初にやるのは、ただの棚卸しです。
経歴。仕事。続けてきたこと。失敗したこと。
悩んできたこと。 何度も戻ってきてしまうテーマ。
ここでは、うまくまとめる必要はありません。
むしろ、綺麗にまとめようとしない方がいいです。
箇条書きで構いません。
この段階でAIに投げる指示文は、こうです。
これから私の経験を箇条書きで渡します。
まだ要約しないでください。
綺麗にまとめないでください。
一つずつ読んで、
「それはなぜですか?」
「そのとき何を感じましたか?」
「そこから何を学びましたか?」
と質問し返してください。
ポイントは、AIに要約させないことです。
要約させると、あなたの経験は「よくある話」に丸められます。
そうではなく、AIに問い返させることで、
自分が「なぜそれをやったのか」「そこで何を感じたのか」を言葉にする側に回ります。
原液は、AIの要約の中ではなく、
あなたが問い返されたときに出てくる言葉の中にあります。
問い2:判断を出す ── なぜ私はそう選んだのか
次に見るのは、判断です。
同じ経験をしても、人によって選ぶ道は違います。
逃げる人もいる。続ける人もいる。黙る人もいる。
声を上げる人もいる。方向転換する人もいる。
あえて不利な道を選ぶ人もいる。
その分岐点に、あなたの判断軸が出ます。
AIには、こう投げます。
ここまで出した経験の中から、
私が他の人と違う選択をしている場面を指摘してください。
そのうえで、
そこにどんな判断基準が働いていたのか、
仮説を立ててください。
ただし、断定しないでください。
私が「違う」「近い」と返せるように、
いくつかの可能性として出してください。
ここで大事なのは、AIの答えをそのまま採用しないことです。
AIが出してきた仮説に対して、
「それは違う」「そこまで綺麗な話じゃない」
「近いけど、もっと引っかかりがある」「本当は、諦めたくなかっただけかもしれない」
こう返していく。
このズレが重要です。
AIの仮説に対して感じる違和感こそ、
自分の判断軸を見つける手がかりになります。
AIは正解を出す存在ではありません。
あなたの中の違和感を浮かび上がらせる鏡です。
問い3:衝動を出す ── 私は何に納得できず、その理不尽をどう変えたいのか
最後に掘るのは、衝動です。
ここが一番深い層であり、このシリーズで最も大切にしている問いです。
思想や世界観は、綺麗な夢からだけ出てくるわけではありません。
多くの場合、その人が世の中の何かに「納得できない」と感じたところから始まります。
なぜ、あの言葉に引っかかったのか。
なぜ、その働き方が嫌だったのか。
なぜ、その風潮に違和感を覚えたのか。
なぜ、同じテーマに何度も戻ってきてしまうのか。
人は、どうでもいいことには反応しません。
繰り返し引っかかってしまうテーマには、その人の核があります。
ただし、ここで止まってはいけません。
大事なのは、「何に納得できないか」を見つけたあと、
その感情を、どう生かしたいのかまで掘ることです。
理不尽への怒りを、怒りのまま吐き出せば、それはただの憤りで終わります。
SNSにあふれている、消費される感情と同じです。
原液になるのは、その一歩先です。
「この理不尽を、自分はどう変えたいのか」
「この違和感を、どんな形にして世に返したいのか」
怒りを、創造のエネルギーに変換する。
その変換点にこそ、あなたにしか書けない思想が宿ります。
AIには、こう投げます。
ここまでの経験と判断軸を踏まえて、
私が繰り返し引っかかっている
「納得できないこと」
「見過ごせない理不尽」
「どうしても放っておけないテーマ」
を抽出してください。
そのうえで、
私がその理不尽を「どう変えたいと思っているか」、
つまり怒りの奥にある願いや使命を、
3パターンほど仮説として出してください。
綺麗にまとめすぎず、
少し生々しい言葉も残してください。
ここでも、AIに綺麗な結論を作らせすぎないことが大切です。
「誰かの役に立ちたい」「自分らしく生きたい」「価値を届けたい」
こういう言葉は間違っていません。
でも、まだ薄い。
その奥にある、
「正しく努力している人が、構造のせいで潰れていくのが納得できない。だから、その人が戦える設計を渡したい」
「AIで効率化しているはずなのに、その人らしさが消えていくのが惜しい。だから、消えない方法を証明したい」
「才能がないのではなく、設計がないだけの人を、見捨てたくない」
こういう言葉の方が、原液に近い。
怒りと、その怒りをどう生かしたいかという願いが、セットになっている。
少し生々しいくらいでいいのです。
むしろ、その生々しさが、あなたの文章に体温を戻します。
3つの問いで出てくるもの
この3つの問いを通すと、手元には「AIが綺麗にまとめた文章」ではなく、
あなた自身の言葉の断片が残ります。
- 事実
- 判断
- 衝動
この3つが揃うと、AIに渡せる原液ができます。
たとえば、記事を書くときは、いきなりAIにこう頼むのではありません。
AIライティングについての記事を書いてください。
これだと、平均的な記事になります。
代わりに、こう渡します。
以下が私の原液です。
事実:
私はAIで発信量を増やしたが、読み返すと自分の声が消えているように感じた。
判断:
AIを使うこと自体は悪くない。ただし、AIに主導権を渡すと、自分の言葉が平均値に寄ってしまう。
衝動:
プロンプト集だけで解決するという風潮に納得できない。
本当に必要なのは、自分の経験や判断軸を先に言語化することだと思っている。
この考えを、同じように悩む人に届けたい。
この原液をもとに、
まず本文は書かず、
記事の見出し構成だけを提案してください。
ここまで渡すと、AIの返答は変わります。
ゼロから書かせるのではなく、原液を増幅させる。
これが、AIを「義足」として使うということです。
AIに主導権を渡した瞬間に失敗する
注意点があります。
この作業は、AIに主導権を渡した瞬間に失敗します。
AIが出してきた綺麗な要約に、
「そうそう、こういうこと」
と、そのまま乗ってしまう。
これは危険です。
なぜなら、その文章は一見整っていても、
あなたの違和感や願いや判断が抜け落ちている可能性があるからです。
AIの役割は、答えを出すことではありません。
少なくとも、原液を掘る段階では違います。
AIの役割は、問い返すこと。 仮説を出すこと。
ズレを見せること。 あなたが反応するための壁になること。
答えを出すのは、いつも自分です。
この主従が逆転しない限り、AIは自分を掘る最高の道具になります。
この記事が向く人・向かない人
この方法は、AIで楽に量産して稼ぐ方法を探している人には向きません。
なぜなら、3つの問いは、自分と向き合う作業だからです。
手軽ではありません。少し面倒です。
場合によっては、自分の中の見たくない違和感も出てきます。
でも、次のような人には向いています。
- AIで発信すると、自分の言葉が薄くなる人
- 専門性や経験はあるのに、発信にすると一般論になってしまう人
- プロンプト集を試しても、しっくりこなかった人
- 自分の世界観や判断軸を、AIに渡せる形にしたい人
- 書く前に、自分の中身を整理したい人
薄くなるのは、あなたに中身がないからではありません。
中身を言葉にする順番を、まだ知らなかっただけです。
よくある質問
AIに自分の経験を話すと、学習されて漏れませんか?
機密情報や個人を特定できる情報は、そのまま入力しない方が安全です。
社名・個人名・具体的な案件名・金額・契約内容などは伏せてください。
必要であれば、「ある職場」「あるクライアント」「過去の案件」のように抽象化して入力しても構いません。
この作業で大事なのは、固有名詞そのものではなく、経験の構造です。
何が起きたのか。
そのとき何を感じたのか。
なぜそう判断したのか。
ここを掘るだけでも、原液は十分に見えてきます。
各AIサービスのデータ利用設定や利用規約は変わる可能性があるため、
心配な場合は事前に確認してから使ってください。
3つの問いは、一度で終わりますか?
一度では終わりません。
むしろ、時間を置いて何度も往復するほど濃くなります。
最初は表面的な答えしか出てこないこともあります。
でも、問い2で判断軸を見て、問い3で衝動を見たあとに、
もう一度問い1へ戻ると、違う事実が出てくることがあります。
「あれも経験だった」
「あの失敗も、自分の判断軸につながっていた」
「あの引っかかりは、ずっと同じテーマだった」
そう気づくことがあります。
原液を掘るのは、一回の作業ではなく、習慣です。
AIを使わず、一人でやってはダメですか?
一人でもできます。
ただし、難易度は上がります。
自分の当たり前は、自分では見えにくいからです。
問い返してくれる存在がいると、掘りやすくなります。
その相手は、人間のコーチでも、編集者でも、友人でも、AIでも構いません。
AIの強みは、何度でも付き合ってくれることです。
夜中でも、途中で言葉に詰まっても、何度でも問い返してくれる。
だから、原液を掘る作業とは相性がいいのです。
まとめ
原液は、特別な才能ではありません。
まだ言葉になっていない、あなたの中身です。
それを掘り出すには、AIに書かせるのではなく、AIに問い返させること。
順番は、事実 → 判断 → 衝動。
私はこれまで何をしてきたか。
なぜ私はそう選んだのか。
私は何に納得できず、その理不尽をどう変えたいのか。
この3つを掘ることで、AIに渡せる原液が見えてきます。
特に最後の問いが大切です。世の中の理不尽に反応する感情は、吐き出すだけなら消えていきます。
でも、その怒りを「どう変えたいか」という願いに変換したとき、
それはあなたにしか書けない思想になります。
そして、掘り出した原液を渡してから、初めてAIに書かせる。
この順番を守るだけで、AIはあなたを消す道具ではなく、
あなたを増幅する義足になります。
AIは水です。
増幅はできても、ゼロからは生み出せません。
原液を持っているのは、いつもあなたです。
もっと体系的に原液を言語化したい方へ
この記事では、AIを壁打ち相手にして原液を掘る基本手順を紹介しました。
ただ、実際にやってみると、
「自分の経験のどこを使えばいいのか分からない」
「判断軸がまだ抽象的になる」
「怒りを、どう願いに変換すればいいのか掴めない」
「AIに渡せる形に整理しきれない」
という壁にぶつかる人もいるはずです。
そのための実践ワークとして、有料noteに AIに書かせても“あなたらしさ”が消えない発信設計 をまとめています。
自分の経験・判断軸・思想・衝動を、発信に使える設計図として整理したい方は、こちらも読んでみてください。
→ note『AIに書かせても“あなたらしさ”が消えない発信設計』
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